ウミガラス Uria aalge inornata
Common Murre

2015.3.26 ウミガラス成鳥冬羽から夏羽に換羽個体 撮影:寺沢 孝毅

全長:44cm
環境:海岸
天売島では国内で唯一繁殖しており冬鳥としても飛来し、春から夏と冬に記録される。
天売島での観察時期:1・2・3・4・5・6・7・8・11・12

天売島での歴史

 ウミガラスは、北半球北部の海に広く分布していて、数十万羽もの集団繁殖地が多数あります。国内ではかつて北海道の数カ所の離島で繁殖していましたが、現在では天売島だけになってしましました。天売島では1963年に8000羽いたという記録がありますが、捕食する魚の減少や漁網にかかってしまうなど、2009年には15羽にまで激減しました。
 ウミガラスは現在、日本においてごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種に指定されています。

復活を目指して

 絶滅の危機に瀕しているウミガラスの減少を食い止めるため、天売島では1990年からウミガラスの集団繁殖する習性を利用した誘い込みが始まりました。かつての繁殖地にウミガラスのデコイ(模型)を設置し、さらにスピーカーから鳴き声を流してあたかも本物の仲間がいるように思わせおびき寄せようとしましたが、ウミガラスは減る一方でした。そこで当初流していたアメリカのウミガラスの鳴き声を天売島で録音した鳴き声に変えたところ、ウミガラスが集まりはじめました。
 その後も紆余曲折を乗り越えた結果、2011年から9年連続で繁殖が成功し、2019年は63羽が天売島に飛来、保全活動を始めてから最大となる23羽のヒナが巣立ちました。

天売島での繁殖生態について

 ウミガラスは毎年天売島へ繁殖のため3月下旬から4月上旬にかけて早朝の赤岩沿岸で見られるようになります。赤岩沿岸で見られる初期の頃は1箇所に集団となって求愛を行い、ひと塊となったり1本の糸のように一列になったりと不規則に形を変えながら海上に浮かんでいるため、この頃に個体数をカウントするとその年の飛来数がだいたい把握できます。
 4月中旬になると複数の集団グループに別れ、一部のウミガラスは断崖の岩棚にデコイが設置してある営巣地に入っていることもあるため、飛来数全体を一度に視認して把握することが難しくなっていきます。
 例年5月20日すぎに初卵が確認され、ここから孵化まで32日ほど抱卵しているため約1ヶ月観察がしにくくなります。7月に入るとヒナが孵化しはじめ、朝のボートクルーズ時に魚を咥え巣のある岩棚に戻っていく姿が見られることもあります。7月下旬になると巣立ちが始まり、夕方赤岩展望台に行くと海から「オロロ……オロロ……」という雛の巣立ちを促す親の呼び声が聞こえてくることも。巣立ち後は巣には戻らず洋上で一日中過ごし、また来年の春親が戻ってくるまでは天売島沿岸では出会えません。
 繁殖後の冬に航路上でウミガラスを観察することが度々ありますが、別の繁殖地から越冬のため天売沖で過ごしている個体なのか、早期に天売島で繁殖する個体が天売島沖で過ごしているのかはわかっていません。

2016.1.15 ウミガラス成鳥冬羽 撮影:寺沢 孝毅

2016.11.17 ウミガラス成鳥冬羽 撮影:寺沢 孝毅